ビッグデータを活用し拓く、持続可能な食の未来

近年、「持続可能性」が生活において重要なテーマとなり、環境問題をはじめとした社会課題の解決や、地域経済活性化の実現に向けた取り組みが求められています。私たちは、2016年に始まった「Tカードみんなのソーシャルプロジェクト」を機に、地域の未来をより良くするためビッグデータを活用し、地域課題の解決に取り組んでいます。

Tカードみんなのソーシャルプロジェクト

2003年のサービス開始から、これまで地域に根差した価値を提供してきたTポイント(※)。私たちは、持続可能な未来に向けて、2016年の「Tカードみんなのソーシャルプロジェクト」を皮切りに、ビッグデータの活用を通じて地域の課題解決に貢献していくことにチャレンジしています。
※2024年4月22日にCCCグループの「Tポイント」とSMBCグループの「Vポイント」が統合し、現在の名称は「Vポイント」となります。

CCCMKホールディングス株式会社 データベースマーケティング事業 瀧田 希

瀧田:「2003年から始まった共通ポイントサービス「Tポイント」は、人々の暮らしに深く密着しながら、地域のお客さまや提携企業とともに、成長を続けてきました。2016年、Tカードが日本の半数以上が持つポイントカードとなったことを機に、『これからは私たちの持つアセットを、ビジネスだけに活用をするのではなく、地域の課題を解決することや生活者の未来をよりよくするために活用できないか』そのような思いが芽生え、社会課題解決や社会価値創出につながることを目指した取り組み『Tカードみんなのソーシャルプロジェクト』をスタートしました。」
「Tカードみんなのソーシャルプロジェクト」では、生活者であるT会員の知見やビッグデータをセキュリティ上厳重に管理された環境のもと、安全なかたちで活用し、地域課題の解決に挑戦しています。

瀧田:「従来Tポイントが大切にしていた、地域に根差した価値をつくるため、私たちは地域の課題解決や活性化に繋がるような取り組みを行いたいと考えており、『Tカードみんなのソーシャルプロジェクト』のテーマを『持続可能性』と定めました。
また、プロジェクトが始まる5年前、2011年の東日本大震災から被災地への支援活動を続けており、東北に住む生活者の方々との関わりが増えていくなかで具体的な活動が見えてきました。支援活動では、子どもたちの児童館が津波で流出してしまったことをきっかけに、『児童館』や『遊び場』をつくっていたのですが、この取り組みには2つの効果がありました。まずは子どもたちが安心して過ごせる場ができること、次に子どもたちの親である大人が心配せずに働きに出られることです。
この時、震災以前のように働きに出られることへの感謝を生活者の方々に伝えていただけたことで、経済や産業が回っていないと地域課題の根本解決とはならず、持続可能性は生まれないことに気づきました。」

三陸の漁業を水産加工品の商品開発で応援「三陸の牡蠣プロジェクト」

被災地への支援活動を通してさまざまな生活者と出会い、一次産業に携わる方々とも親交を深めていくなかで、ある時、地元の漁師さんからお聞きしたのが、世界三大漁場の一つである三陸の漁業が抱えている課題です。船や機材を津波で失い、漁師の方々が亡くなり、海の資源をとることが難しくなり、漁業が未来へ繋がらなくなるという不安を抱えていました。そこで具体的な活動として行ったのが、「三陸の牡蠣プロジェクト」です。
瀧田:「漁師さんから三陸の漁業の課題として抱えている魚種をお伺いしていくなかで出てきたのが、牡蠣でした。三陸の牡蠣は、生牡蠣として美味しく食べられる品質の高さが有名ですが、生牡蠣が売れる期間は限られており、季節によって売上にばらつきが出てしまうという課題を抱えていました。牡蠣を加工品として販売ができれば、一年を通して三陸の牡蠣を全国の消費者に届けられ、三陸の牡蠣の魅力を知ってもらえます。こうした循環が回ることで、三陸の牡蠣の経済性が高まり、漁業にとっての持続可能なモデルになると考えました。」

プロジェクトメンバーは、現地の漁師さん、流通関係者、データベースによって料理や食にこだわりがある傾向、魚介好きなどの傾向から導き出されたT会員の有志で構成され、商品開発に取り組みました。商品の開発において、ベストシーズンの大きな牡蠣だけでなく、品質は高いものの、生産工程では形や大きさが規格に合わず捨てられてしまう牡蠣の有効活用も含めた話し合いを進めました。

瀧田:「生産者・流通・消費者が三位一体となったプロジェクトチームを結成し、データ分析から試作品の提案までを一気通貫で行い、数々の話し合いを重ねながら2つの商品が生まれました。ひとつは、ベストシーズンだけれど一般的にはあまり知られていない春先の大きな牡蠣の旨みを感じられる、丸ごと揚げたカキフライです。外はサクッとした食感、中はジューシーで生牡蠣のような風味も感じられる魅力を詰め込んだカキフライは、カレーとガーリック味・パセリとチーズ味の2種展開となっています。もう一つは、牡蠣剥きの際にでる端切れを使ってバジルとともにオイルにあえた、カキとバジルのオイル漬けです。」

(左上)「カレーとガーリック味の大きなカキフライ」 (右) 「パセリとチーズ味の大きなカキフライ」 (左下)「カキとバジルのオイル漬け」※現在は販売を終了しています。

瀧田:「この取り組みの際に、漁師さんからは『職業柄、海の上で多くの時間を過ごすことが多く、消費者と直接対話をできることは多くありません。今回、消費者のみなさんから直接牡蠣のニーズや思いを聞けたことで、気付きがありました。』とお声をいただくことができました。一方、消費者であるT会員からは『被災地の方々の役に立ちたいと思って参加しましたが、漁業に携わる方々と顔を合わせて商品開発ができたこと、私たちの意見が反映された商品がつくられたことに、大きな喜びを感じました。』とお話をいただいています。経済活性化につながればと思い一次産業の一つである漁業の取り組みを行い、こうした体験から漁業に向き合い、地域課題への取り組みを行うことへの思いがさらに強くなりました。」

『五島の魚プロジェクト』未利用魚の活用で離島の漁業が抱える課題の解決に挑戦

長崎県の西に位置する、大小150の島々からなる五島列島。豊かな海の資源をもつ一方、島の外へ輸送するためのコストがかかることや鮮度保持の難しさから、出荷する魚が限定されるという悩みを抱えていました。

瀧田:「離島の漁業の課題には、以前から注目していました。まず、より具体的な課題を特定するために、現地に1週間ほど滞在しながら、漁師さん、水産加工業者さん、市場の方々、行政などの関係者に話を伺いました。そのなかで共通して出てきた課題が、『未利用魚』です。『未利用魚』はメジャーな魚種でない、おいしく食べられる方法がないなどの理由から、価値が付かない魚といわれており、網にかかっても出荷することができないため海の上で捨てられてしまうことも多くあります。しかし、未利用魚も貴重な海の資源であり、活用することができれば、五島の漁業の状況を少しでも変えることができるのではと思いました。」

五島の代表的な未利用魚は、アイゴやブダイ、ニザダイやイスズミといったものがあります。海藻を食べて生育するため磯のにおいが強く、消費者に好まれないという課題がありました。また、海藻が減少する現象である磯焼けが起こると漁業や生態系にとって重要な海洋生物が消えたり水質が悪化してしまうという背景もあり、未利用魚の活用をテーマに商品開発を行いました。

イラスト(左上)アイゴ (右上)ブダイ (左下)ニザダイ (右下)イスズミ、絵画協力:五島高校・五島海陽高校・五島南高校 美術部員

瀧田:「離島のためもともと輸送コスト課題があるところに、生産工程が複雑になるとさらにコストがかかり、都市部に流通させられないという地域傾向から、工程をできるだけシンプルにしながらも未利用魚のブダイを生かしたレシピをプロジェクトメンバー、メーカーの浜口水産さんが試行錯誤され『五島のフィッシュハム』を開発しました。」

未利用魚を活用した『五島のフィッシュハム』

瀧田:「五島の魚ときれいな海を守るためにも、網にかかった未利用魚に一定の価値をつけて利用することが、サステナブルな漁業につながるのではないかと思い、五島の未利用魚を活用した商品開発に取り組みました。生活者の共感を得ながら海の恵みを生かすことができ、ひいては持続可能な漁業、日本のエシカルな食文化につながっていける可能性があると感じました。」

共創型プラットフォーム「Vみんなのエシカルフードラボ」

社会課題の解決や地域共生に向けた取り組みは、今も広がり続けています。
2021年3月より、CCCグループのアセットを活用し、一地域、一企業だけでは解決が難しかった課題に対して、生活者を中心に業界を超えたさまざまな知見を有するステークホルダーと対話を重ねながら、世界的な課題である「持続可能な食」につながるアクションについて考え、行動していく共創型のプラットフォーム「Vみんなのエシカルフードラボ」に取り組んでいます。

「Vみんなのエシカルフードラボ」では、活動のひとつとして「五島の魚プロジェクト」を通じて発見されたテーマ「未利用魚」を活用し、付加価値を加えた商品の開発を継続的に行っています。この取り組みによって、「未利用魚」と生活者との接点を増やし、エシカルな食の考え方への共感を広めながら、日本の食生活に貢献する活動を進めています。

「アイゴあふれるオイル漬け」
「コノシロやわらか煮」

また、これまで生活者が普段利用しているスーパーなどで手に取る商品が、エシカルなものであるかどうかを判断する基準がなかったことに着目し、私たちは「エシカルフード基準」を作成しました。これにより、どの食品がエシカルなのかを確認できるようになります。

「エシカルフード基準」サマリ※ https://ethicalfoodlab.tsite.jp/assets/pdf/ethicalfood_kijyun_v.pdf

瀧田:「エシカルフード基準の作成にあたっては、食、エシカル、SDGsなどの各分野の12名の有識者とエシカル消費に関する活動で著名なイギリスのNGOの「エシカルコンシューマー・リサーチアソシエーション」のみなさまとともに、グローバルスタンダードを重視しつつ、日本で適用できる範囲を模索しました。また、公平性・透明性・公共性を担保しながら基準を策定するために、基準ができるまでの対話の過程を全て対話録として公開しています。現在、この基準はこの領域の取り組みをしている企業などの参考事例となったり、お問い合わせをいただくことも増えてきています。日本国内でもエシカルの輪が広がり始めていることに嬉しく思っています。」

CCCMKホールディングスは、地域の未来をより良くするため、これからも「持続可能な食」の実現を目指し社会課題の解決に取り組み続けます。
瀧田:「私たちの取り組みは、生活者、地域、企業、市民団体など、さまざまな立場の人々が一堂に会し、共に考え、共に動く『マルチステークホルダープロセス』を通じて進められています。時には利害が対立し、意見が食い違うこともありますが、それぞれの思いや価値観を尊重しながら、未来にむけた解決策を見出していくことが、私たちにできること、やるべきことだと感じています。
私たちが目指しているのは、『持続可能な食』を実現するための基盤を築くことです。私たちの有するデータと食のニーズをかけ合わせることで、社会や地域が抱える課題を一緒に解決し、次世代へと繋がる未来を作り出すことができるといいなと思っています。人々にとってエシカルフードがもっと身近なものになり、社会にはエシカルな食文化が広がっていく、そのような変化の一端を担っていることを、私たちは嬉しく思っています。」

※CCCMKホールディングスは、お客さまのプライバシーとパーソナルデータの保護に則り、データを適切に取り扱いしています。詳しくはプライバシーセンターをご覧ください。

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