モビリティのパラダイムシフトに挑む
「A PIT AUTOBACS」

若者のクルマ離れ、EVへの移行が叫ばれる世の中で、求められる店舗のあり方も変化しています。株式会社オートバックスセブン(以下、オートバックス)は、2018年に新業態「A PIT AUTOBACS(アピットオートバックス)」をオープン。私たちは、CCCグループが有するV会員のライフスタイルデータをもとに、「A PIT AUTOBACS」のマーケティングや店舗企画の支援を行いました。

「A PIT AUTOBACS」とは

「A PIT AUTOBACS」は、カーライフ(=クルマがあることでもっと楽しく・豊かになる生活)を提案するオートバックスの新業態です。安心感・清潔感のあるPITをコアに、店内にはカスタムパーツやこだわりのカー用品はもちろん、クルマ専門書籍・雑誌、クルマで出かけたくなる旅行やアウトドアの書籍・雑誌をコーヒー片手に楽しめる「BOOK & CAFE」を展開しています。豊富な品揃えのカー用品や書籍・雑貨を有機的に融合した売り場づくりで、クルマ好きの方はもちろん、近隣に暮らす学生やファミリー層など、お客さま一人ひとりに "私らしいカーライフ"を提案しています。

100年に一度の大変革期を乗り越えるべく生まれた新業態

所有から共有の時代へ。2018年当時はシェアリングサービスの普及や、個人が所有するクルマをシェアする取り組みの開始などにより、クルマの所有概念が大きく変わりつつありました。「100年に一度の大変革期」と言われ、クルマを取り巻く環境が大きく変化する中、「クルマ好きだけに向けたお店」から「クルマに乗る全ての人に向けたお店」を生み出すための店づくりをスタートしました。
山添氏:「オートバックスといえばカー用品というイメージが強いと思いますが、環境変化にともないクルマ好きだけをターゲットにしたビジネスモデルを転換させる必要がありました。クルマを運転している人はもちろん、助手席に乗っている人にも、ファミリーにも、あらゆる世代に楽しんでいただけるお店をコンセプトにしました」

株式会社オートバックスセブン A PIT企画推進部 部長 山添龍太郎 氏

感覚に頼らない、データを根拠にしたお店づくりを実現

2017年に設立した「ABTマーケティング株式会社(※)」を通じて、顧客層のニーズ把握をデータ起点で実施しました。クルマ好きの方に満足いただけるPITを中心とした店舗デザインや、親子でくつろげる「BOOK & CAFE」、「ライフスタイル別売場」の導入など、ファミリー層をはじめとしたあらゆるお客さまに対して、居心地を追求した店づくりを実現。2018年11月に新業態の1号店となる「A PIT AUTOBACS SHINONOME」が東京都江東区にオープンしました。
(※)オートバックスセブンとCCCMKホールディングスとの間で設立した合弁会社。オートバックスが有する顧客基盤およびカーライフのノウハウと、CCCグループが有する顧客基盤およびライフスタイル提案力といった両社のリソースを連携し、カーライフを軸としたデータベースサービスの構築と、マーケティングサービスを実施することを目的としています。

山添氏:「私たちはオートバックスをご利用されているお客さまのことは分かったとしても、ご利用されたことのない方のことを知る術がありません。そこで活用したのがABTマーケティングのデータです。オートバックスが持つ顧客基盤とCCCグループが持つ顧客基盤のデータを分析し、売場構成や商品選定に活用しています。それにより感覚や思い込みではない、データに基づいた意思決定が実現できました」
さらに、売場では「旅とクルマ」「自然とクルマ」「ガレージとクルマ」「家族とクルマ」など、ライフスタイルテーマとクルマを掛け合わせた売場を展開。クルマに乗る全ての方々に、クルマの新しい楽しみ方を発見できる商品を提案しています。

山添氏:「旅をする際にクルマに必要なものは何か、クルマを使って自然を楽しむ人に提案できることは何か、という発想のもとマーチャンダイジングを行っています。物を買うだけではなく、買った物を使うとどんなライフスタイルが叶えられるか提案するという、これまでのオートバックスにはない新しい考え方を取り入れました」

「A PIT AUTOBACS」2号店が西日本に初出店

「A PIT AUTOBACS SHINONOME」は当初の狙い通り、クルマ好きはもちろん、家族連れでのご来店も多く、クルマ業界でも"話題のお店"としてTVやWebなど各種メディアで注目されました。また、顧客データを見てもパラダイムシフトが起き始めており、これまで来店の少なかった女性を含めたあらゆる世代のお客さまにご来店いただけるお店になりました。
2022年9月には京都に2号店となる「A PIT AUTOBACS KYOTO SHIJO」がオープン。1号店のコンセプトはそのままに、売場では日本最大級のカー用品を品揃えし、アウトドアグッズやアパレルも多数展開。3階まで吹き抜けとなった開放感あふれる空間でくつろげる「BOOK & CAFE」もあり、クルマへの愛着を深めながら楽しい時間が過ごせる場所です。
山添氏:「1号店で培ったノウハウを活かして2号店をオープンしました。取り扱っている商品はデータ分析をもとに店舗ごと変えています。データからお客さまのニーズが店舗により異なることが分かるので、同じアパレルでも扱っているブランドを変えたりしています」

「A PIT」のブランド認知を高め、次のビジネスへ

最近はインバウンドのお客さまも増えており、クルマの書籍からパーツに至るまで各国のクルマ文化に合った商品が売れているといいます。
山添氏:「『A PIT AUTOBACS』は何と呼ばれているかご存知ですか。実は『オートバックス』ではなく『A PIT(アピット)』と呼ばれているんです。まだまだ伸びしろはありますが、ブランドの認知が一定程度進んだことの現れだと評価しています。日本のクルマの文化的な部分が『A PIT』に来れば分かるなど、この『A PIT』ブランドの浸透を活かし次のビジネスにつなげていきたいと考えています」

山添氏:「100年に1度の大変革期。何もしなければお店は陳腐化してしまいます。世の中の変化や顧客ニーズを掴み進化するためにはデータが必要です。例えば「キャンプが流行っているから初心者向けキャンプ用品のニーズが高まるのでは?」という仮説を品揃えなどに反映し、購買データから効果検証を行っていく。そうしたデータをもとにしたPDCAを回すことで、より顧客ニーズに沿った店づくりを実現できると考えています」

プロジェクトトップへ戻る