
CCCのアセットを活用した渋谷サクラステージへの出店を含む東急不動産との広域渋谷圏における「まちづくり協定」
2024年7月25日に東京都渋谷区桜丘にオープンした「渋谷サクラステージ」。ここには書店である「TSUTAYA BOOKSTORE」だけでなく、「SHARE LOUNGE」、CCCアートラボが企画・運営する「re-search」や、CCCが企画に携わった、地域応援や生産者支援をテーマとした食品とアパレル雑貨の店である「チートトウキョウ」など、さまざまなかたちでCCCのアセットを活用した出店を行っています。
出店に際し、東急不動産様と「まちづくり協定」を締結し、単なるテナントインというかたちではない関係性を構築し、イベントの開催やまちを盛り上げていく仕組みづくりなどに尽力しています。
今回は「渋谷サクラステージ」開業にあたりCCCにお声がけいただいた東急不動産株式会社 都市事業ユニット スマートシティ推進室 大久保崇氏を中心に、CCC 新業態開発本部 事業開発部 原田 権一朗、CCC 新業態開発本部 事業開発部 リサーチ&プランニング水野早紀の3名にインタビューを行いました。
―開業準備中の大久保さんの役割を教えてください。
大久保氏:「当時の役割としては、新たな大規模複合施設『渋谷サクラステージ』における当社商業エリアの企画とテナントリーシング担当でした。どういったテナントさまに入っていただくかという部分からその営業までを担っていました。
『渋谷サクラステージ』の開業が決まって、構想を練りはじめた初期の段階で、ECで何でも購入できる時代になり、さらにコロナ禍を経てライフスタイルの変化が加速したことで、今までの延長線にはない新しい商業施設の形を考えていく必要があると考えるようになりました。」

そこで、『リアル』でしか体験できない、『リアル』だからこそ体験できる、新しい発見や出会い、楽しさがある場所を提供するのがいいのではないかと考えました。それは決してディベロッパーだけでできる訳ではなく、商業施設に入ってもらうテナントさまを含めて、一緒に考えて、共に街づくりをしていく必要があるのではないかと思いました。そこで、従来の賃貸借契約以上の関係を築くことができるテナントさまに入っていただき、その後一緒にどう街づくりをしていくのか、そういった新しいパートナーのかたちを模索していこうということになりました。それが、CCCさんとも結ばせていただいた『まちづくり協定』です。
そのような背景を踏まえ、一緒に街を盛り上げてくださるパートナーという目線でテナントに入っていただく企業を探しました。

―どういった背景で、CCCにお声がけいただいたのでしょうか?
大久保氏:渋谷という街から書店が少なくなってきている、という背景があり「渋谷サクラステージ」には本の要素を入れたかったという想いはありました。
また、桜丘というエリアは、もともと『趣味の街』というイメージが強く、昔は、ジャズ喫茶や、ライブハウスも多かったですし、ニッチな書店、テニスや卓球などスポーツ関連のお店や、釣具店など多岐にわたるジャンルのお店が駅前という立地にも関わらず軒を連ねていました。そういった土地の特性を途絶えさせずに、継承していきたいと考えた中で、『本』でならすべてのジャンルを網羅できるのではいかと思いました。本を切り口にしたさまざまなライフスタイルを提案しているとなると、やはりCCCさんだと思ってお声がけしました。
「代官山 蔦屋書店」や「二子玉川 蔦屋家電」などのお店を拝見していて、本を切り口としたライフスタイル提案を行っていて、単なる書店ではない、新しい発見があるわくわくする店舗空間を体現していると感じていたので、出店をしていただき街づくりも一緒に取り組みたいと思っていました。
個店ごとで独立した商業施設ではなく、テナント同士もつながりができるようなかたちを理想としていました。CCCさんが展開している『T-SITE』のようなかたちですね。」
―街づくりを一緒に行っていくという取り組みに至る経緯を教えてください。
原田:「商業施設がオープンする際の新規開発にあたり、どういった価値を持った施設なのか、目指していることはどういうことなのか、周辺の環境やターゲットなどを記載しているいわば商業施設の概要をまとめる『コンセプトブック』づくりのために、Vポイントのデータを活用したマーケティング調査やアンケート調査などの桜丘周辺にいらっしゃる方がどんな方々なのかを調査することからスタートしました。そこから、どういったジャンルに注力するのが良いのかを導き出しました。」

大久保氏:「振り返ると、その開発段階に行ったマーケティング調査は必要だったなと実感します。開発時にはやはり定量的なデータは必要になってきます。数字で見せることの説得力は違いますよね。」
原田:「桜丘周辺にいらっしゃる方の興味の高いジャンルは、『ゲーム』『フード』『アート』『音楽』『スポーツ』でした。『アート』についてはCCCのアートラボが一緒に取り組めそうだということや、4階で書店を展開するなら同じフロアでエンターテインメントという共通点がある『ゲーム』と連携できたら面白いよね、『フード』についても何かしら取り組めると良いなと思っていました。」

水野:「『フード』に関しては、別件でやりとりのあったCCCMKホールディングスにいた担当者が食の取り組みを行っていたということもあり、大久保さんが関心を持ってくれて何か一緒に取り組んでいくために深堀りしていったという経緯がありました。地方とつながる取り組みとしても展開できるし、イベント開催なども見込んでいたので面白くなりそうだねという話になりました。」

―そういった背景があって、店づくり、まちづくりがはじまったのですね。
水野:「担当部署だけが出店に携わるというかたちではなく、CCC社内から色々なメンバーが参加して店舗プランを作った今回の形は珍しい出店形態かなと思います。『TSUTAYA BOOKSTORE』というある程度確立されたパッケージの中で本をどのジャンルを厚めにするか、アートをどのように店内に取り入れるか、ファサードについて一緒に考えたり……CCC社内の部署間の連携で作り上げられた企画だなと思っています。」
―実際にオープンした様子をご覧になってみて、当初想定されていたかたちと比較していかがでしょうか?
大久保氏:「当初の思い通りのかたちに出来上がったと思っています。集客に強みを持つ『書店』をはじめ、魅力的なフードホールや『ゲーム』を切り口にしたイベントスペース、また2階には周辺のワーカーやお住まいの方も使える充実した食物販エリアもできました。また、施設の中央に位置するエスカレーター周りの部分については、イベントのように変化のあるものを入れたかったのですが、それも実現しています。4階にはCCCアートラボによる『re-serch』という展示スペースもできて、『アート』の要素を入れることもできました。」

水野:「我々のチームは通常は出店プランにそこまで深く入り込むチームではないのですが、今回はマーケティング調査からスタートして、日々入れ替えを行う商品のことまで関与することができ、そしてそれを実際に開業してお客様が入ったあとの現状が見えるというのは、なかなかないケースです。」
原田:「『アート』についても、CCCが出店する、のではなく、東急不動産さんと一緒に作っていこうという座組だからこそ実現できる『新しいこと』があると思います。オープンから半年経過した現在でも定例会を開催し、一緒に売場づくりを続けています。」
大久保氏:「当初からそういったかたちを理想としていました。フードホールに出店してもらったテナントさまも、食物販のテナントさまなども、皆さん開業して終わり、ではなく開業後もみんなで集まって次はどんな面白いことするかを話し合うような、仲の良い町内会のようなことができたらいいなと思っていました、ディベロッパーが中心にいて『次のイベントはこうなります』といった話をするのではなく、それぞれが施設、ひいては街を盛り上げるために『これが一番面白い!』を持ち寄って話ができる環境を作りたかったんです。
CCCアートラボの展示スペース『re-search』と、隣接するゲームクリエイター拠点『404 Not Found』が連動したアートイベントを開催するなど、テナント様同士がつながって展開するようなイベントも今後増えていくと良いなと思っています。」

―今後CCCに期待することはどういったことでしょうか?
大久保氏:「そうですね、我々東急不動産はあくまで場づくりの企業です。CCCさんには本というコンテンツがあって、それを基軸に音楽やアートなど色々なものがつながっていますよね。そして、それが時代によって変化していくので、時流をキャッチしているのだと思います。だから、今後も場の特性に合わせた面白い提案を一緒に作っていけると嬉しいです。やっぱりCCCの魅力は本を基軸として、どんなかたちにも広げていけるという『総合力』だと思うんです。」

原田:「確かに、CCCはこれまでも書店を展開してきていますが、『フード』については今回初めて『チートトウキョウ』という新しいパッケージを展開しています。まだまだな部分も大いにありますが、僕らが持っている店づくりのノウハウや経験、そしてコンテンツと、東急不動産さんが持っている場が、うまくマッチしてひとつの企画となったことはCCCとしても新たな価値を創出できたと思っています。いま、東急不動産さんと新たにお取り組みさせていただいている案件がいくつかありますので、引き続き一緒にさまざまなチャレンジをしていけると嬉しいです。」
